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Chem. Eur. J. 誌にキノコの生理活性に関わるステロール類の合成に関する論文が掲載されました!

執筆者の写真: Kobayashi ShojiKobayashi Shoji

更新日:1月8日


キノコは代表的な健康食材であり、その健康増進機能には、含有する低分子成分が深く関わっていると考えられます。

私たちは、代表的なキノコの成分であるステロール類を、生合成前駆体と考えられるエルゴステロールから短段階で網羅的に人工合成することに成功しました。さらに、合成化合物のいくつかに認知症の要因となるアミロイドβ凝集の抑制効果があることを見出しました。


原著論文はこちら


まず、ステロール類の生合成経路を独自に考察し、エルゴステロールの一次酸化物と考えられるエルゴステロール-5,8-ペルオキシドから、生体内環境に匹敵する極めて穏和な条件で骨格異性化が起こることを見出しました。

新しく見出した条件により、従来法では供給が困難であった5,6-エポキシステロール類を実用的に供給することが可能になりました。また研究過程で、前例のない新規骨格分子を発見し、その精製と構造決定にも成功しました。


独自に推定した生合成経路に基づき、合計13個のキノコ含有天然物の合成に成功しました。合成化合物の中には、天然物の構造が間違って報告されていたものも含まれ、今回の合成によって正しい構造に訂正することができました。


また、キノコに含まれる天然物だけでなく、深海に生息する菌から単離された特異な三環式天然物の合成にも成功しました。

本天然物の合成はすでに報告例が1例ありましたが、合成には高温と高価な触媒が必要でした。今回、入手容易な安価な試薬を使い、常温での合成を達成したのは特筆すべき点です。


アルハイマー病の原因として、アミロイドβタンパク質の凝集・沈着が指摘されていますが、今回合成した化合物群の中にアミロイドβ凝集抑制活性を示すものを見出し、実際に神経細胞の生存を助けることを確認しました。


本研究の成果は、キノコに含まれるステロール類の生合成経路や生物学的な役割を解明するのに役立ち、天然のキノコから僅かしか得られない希少な成分の実用供給や構造決定にも貢献するものです。


本年3月に卒業した長安さんが、現M1の東郷さんと協力して研究を進めました。

活性試験には京都府立大学・長井薫先生にご協力頂きました。

大変な苦労がありましたが、こうしてまとまった成果を公表することができ、大変嬉しく思います。


研究成果を補足するサポーティングインフォメーションも約200ページもあり、私の研究者人生で代表的な論文になると思います。

ステロールの研究は引き続き行いますので、ご支援・ご鞭撻をよろしくお願いします。


論文の要旨の反応式とキノコの写真







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