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学際的連携によるヤマブシタケ子実体から新規ヘリセノンの発見

学際的連携によるヤマブシタケ子実体から新規ヘリセノンの発見

私たちの研究室では、ヤマブシタケに含まれる活性成分(ヘリセノン類)の人工化学合成に取り組んでいますが、2021年に報告した論文で、神経保護活性のあるヘリセノンZの合成を報告しました。その論文で、ヘリセノンCからヘリセノンZに至る詳細な反応機構を示し、さらに副生成物として単離したクロマン型分子やフラン型分子の合理的な生成経路も提案しました。

私たち共同研究グループは、一連の合成経路が「生合成経路」としても妥当であり、副生成物として単離したクロマン型分子やフラン型分子、またそれらの前駆体であるエポキシド中間体も実際の天然ヤマブシタケに含まれるであろう、と仮説を立てました。責任著者の一人である河岸先生らの研究グループは、再び天然ヤマブシタケから抽出・精製作業を行い、そこで得られた各画分を宇都宮大の謝先生に提供して質量分析を行いました。

その結果、精製したヤマブシタケの画分に、合成副産物であるクロマン型分子、フラン型分子、エポキシド中間体などが含まれていることがわかりました。さらに、今までに発見されていない分子イオンピークも見出し、その分子がヘリセノンZやクロマン型分子の脱水生成物であると予測しました。

当研究グループは、全合成したヘリセノンZやクロマン型分子の脱水反応を詳細に検討し、その予測した脱水生成物の構造同定を試みました。結果的に、5員環構造のヘリセノンZからも6員環構造のクロマン型分子からも同じ脱水化合物が生じることを見つけ、質量分析で検出された新規天然物は、5員環構造であるヘリセノンZの直接脱水体であると推定しました。

私たちが合成した脱水化合物を標品として再び質量分析を行った結果、クロマト保持時間や質量ピークは合成試料と未知試料で一致し、新規天然物はヘリセノンZの直接脱水体であると判明しました。新規天然物には神経細胞保護効果はありませんでしたが、構造活性相関に関する重要な知見が得られました。

合成研究で得た副生成物や生合成経路仮説を、再び天然物の解析にフィードバックして新たな分子の発見や存在証明につなげた例は今までほとんどありません。このような研究アプローチは、新たな天然物の発見や生合成経路の解明だけではなく、自然界の生物に含まれる極微量な成分の分析にも役立ちます。

〒535-8585 大阪市旭区大宮5−16−1

大阪工業大学工学部応用化学科 (10号館11階)

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